ECを運営していると、「在庫が多すぎるのか」「今の在庫量で適切なのか」を判断しにくいことがあります。
その判断に使える代表的な指標が在庫回転率です。
在庫回転率を見ることで、 一定期間に在庫が何回入れ替わったのかを確認でき、 売れ行きに対して在庫を持ちすぎていないかを判断しやすくなります。
ただし、在庫回転率は高ければ必ずよいわけではありません。 高すぎると欠品が増える場合があり、 低すぎると滞留在庫や資金の固定化につながる可能性があります。
この記事では、小規模ECでも利用しやすいように、 在庫回転率の計算方法、在庫回転日数、SKU別の見方、 回転率が低い原因、適正在庫へ改善する方法を順番に解説します。
- 在庫回転率は一定期間に在庫が何回入れ替わったかを見る指標
- 金額ベースでは「売上原価 ÷ 平均在庫金額」で計算する
- 数量ベースでは「販売数量 ÷ 平均在庫数量」でも確認できる
- 平均在庫は期首在庫と期末在庫から求める方法が基本
- 回転率が低い商品は滞留・過剰在庫の候補になる
- 回転率が高すぎる場合は欠品リスクも確認する
- 適正値は商品カテゴリ・利益率・季節性・リードタイムによって異なる
ECの在庫回転率とは
在庫回転率とは、 一定期間の中で在庫が何回販売され、入れ替わったかを表す指標です。
たとえば年間在庫回転率が6回であれば、 平均的には1年間に在庫が約6回入れ替わったと考えることができます。
在庫回転率を見ることで、 売上に対して在庫を持ちすぎている商品や、 逆に在庫が少なすぎて欠品しやすい商品を見つけやすくなります。
在庫が長期間残っている可能性があります。 過剰在庫、販売低下、発注過多などを確認します。
在庫効率は高い一方、 在庫量が少なすぎると欠品や販売機会損失が発生する可能性があります。
在庫回転率だけで商品の利益や売上の良し悪しが決まるわけではありません。
売上、利益率、欠品率、リードタイムなどと組み合わせて、 在庫量が適切かを判断するために利用します。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率には、 金額を使う方法と数量を使う方法があります。
経営管理では金額ベース、 SKU単位の実務管理では数量ベースを使うと分かりやすい場合があります。
方法1|売上原価と平均在庫金額で計算する
在庫回転率 = 期間中の売上原価 ÷ 平均在庫金額
たとえば年間の売上原価が1,200万円、 平均在庫金額が200万円の場合、
1,200万円 ÷ 200万円 = 6回
となり、年間在庫回転率は6回です。
在庫を原価ベースで管理している場合は、 分子にも売上高ではなく売上原価を使います。
売価ベースの売上と原価ベースの在庫をそのまま組み合わせると、 回転率を正しく比較しにくくなるため注意してください。
方法2|販売数量と平均在庫数量で計算する
SKUごとの在庫運用では、 数量ベースで確認する方法も分かりやすいです。
在庫回転率 = 期間中の販売数量 ÷ 平均在庫数量
たとえば3か月間で600個販売し、 その期間の平均在庫が100個だった場合、
600個 ÷ 100個 = 6回
となります。
平均在庫の計算方法
在庫回転率では、 期末時点の在庫だけではなく、 一定期間の平均在庫を利用します。
平均在庫 =(期首在庫 + 期末在庫)÷ 2
計算例
- 月初在庫:100個
- 月末在庫:60個
この場合、
(100個 + 60個)÷ 2 = 80個
となり、平均在庫は80個です。
大量入荷やセールによって在庫が大きく変動する場合、 期首と期末だけでは期間中の実態を正確に表せないことがあります。
その場合は、 日次在庫や週次在庫の平均を利用すると、 より実態に近い在庫回転率を確認できます。
在庫回転率を具体例で計算する
3つの商品を例に、 数量ベースで在庫回転率を比較してみます。
| 商品 | 月間販売数 | 平均在庫 | 在庫回転率 |
|---|---|---|---|
| 商品A | 300個 | 100個 | 3回 |
| 商品B | 100個 | 100個 | 1回 |
| 商品C | 30個 | 150個 | 0.2回 |
商品Aは、平均100個の在庫に対して月300個販売しているため、 月間で3回在庫が回転しています。
商品Bは月1回、 商品Cは0.2回です。
商品Cは他の商品に比べて在庫の動きが遅いため、 在庫数量や次回発注量を見直す候補になります。
高単価商品、季節商品、受注頻度が低い商品などは、 意図的に回転率が低くなることがあります。
商品特性と比較せず、 全SKUへ同じ基準を適用しないことが重要です。
在庫回転日数も合わせて確認する
在庫回転率を「何回転したか」ではなく、 「平均すると何日分の在庫を持っているか」で確認したい場合は、 在庫回転日数を利用します。
在庫回転日数 = 対象期間の日数 ÷ 在庫回転率
年間在庫回転率が6回の場合、
365日 ÷ 6回 ≒ 61日
となり、 平均すると約61日分の在庫を保有していると見ることができます。
| 年間回転率 | 在庫回転日数の目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 12回 | 約30日 | 約1か月分の在庫 |
| 6回 | 約61日 | 約2か月分の在庫 |
| 4回 | 約91日 | 約3か月分の在庫 |
| 2回 | 約183日 | 約6か月分の在庫 |
| 1回 | 365日 | 約1年分の在庫 |
在庫回転率に適正な数値はある?
在庫回転率には、 すべてのECショップに共通する「○回なら適正」という基準はありません。
商品単価、利益率、販売頻度、仕入れリードタイム、 季節性、最低発注数量などによって適切な回転率は異なります。
販売頻度が高く、 比較的高い回転率になりやすい商品です。
販売頻度が低いため、 回転率が低くても必ずしも問題とは限りません。
年間平均より、 シーズン中とシーズン終了時の在庫を見ることが重要です。
リードタイムが長いため、 欠品防止のため一定の在庫を持つ必要があります。
在庫回転率は業界平均だけを見るよりも、 同じSKUの過去3か月、前年同月、前シーズンなどと比較すると 変化を把握しやすくなります。
在庫回転率が低いときに確認する7項目
1 販売速度が落ちていないか確認する
過去30日、60日、90日の販売数量を比較し、 最近売れ行きが落ちていないか確認します。
2 発注量が多すぎなかったか確認する
販売速度に対して一度の発注数量が多すぎると、 売上に問題がなくても回転率は低下します。
3 発注頻度を確認する
大量発注を低頻度で行うより、 少量を高頻度で補充できる場合は、 平均在庫を減らせる可能性があります。
4 商品ページを確認する
アクセスはあるのに販売されていない場合、 価格、商品画像、説明、送料、配送条件などが 購入を妨げていないか確認します。
5 SKU別の偏りを見る
商品全体では売れていても、 特定のサイズや色だけが残っている場合があります。
商品単位だけでなくSKU単位で回転率を確認します。
6 季節性を確認する
シーズン終了後の商品は、 今後の販売見込みが急速に下がる場合があります。
年間平均だけでなく、 シーズン終了までに消化できる数量を確認します。
7 追加発注が残っていないか確認する
回転率が低下している商品へ追加在庫が入荷すると、 過剰在庫がさらに増える可能性があります。
発注残や自動発注設定も確認してください。
在庫回転率が高すぎる場合も確認する
回転率が高ければ在庫効率は良く見えますが、 在庫を減らしすぎている可能性もあります。
次のような状態がないか確認する
- 売れ筋商品の欠品が頻繁に発生している
- 注文を受けてもすぐ発送できない
- 入荷待ちによる販売停止が増えている
- 広告中の商品が欠品している
- 急な需要増加に対応できない
在庫を極端に減らせば、 数字上の回転率を高くできる場合があります。
しかし欠品によって売上を失えば、 EC全体では改善とはいえません。
回転率だけでなく、 欠品率や販売機会損失も合わせて確認します。
在庫回転率と発注点を組み合わせる
在庫回転率は、 現在の在庫量が販売速度に対して多いか少ないかを見る指標です。
一方、発注点は、 在庫がどの数量になったら次の商品を発注するかを決める指標です。
| 指標 | 分かること | 利用目的 |
|---|---|---|
| 在庫回転率 | 在庫がどの程度動いているか | 在庫量の評価 |
| 在庫回転日数 | 何日分の在庫を持っているか | 在庫保有期間の把握 |
| 発注点 | いつ発注するか | 欠品防止 |
| 安全在庫 | 予備として何個持つか | 需要変動・納期遅延対策 |
在庫回転率が継続して低いSKUは、 販売改善だけでなく、 発注点、安全在庫、1回の発注量も見直します。
SKU別に在庫回転率を見る
ECでは商品単位だけでなく、 色・サイズなどのSKU単位で確認することが重要です。
たとえば同じTシャツでも、 Mサイズはよく売れ、 XLサイズは長期間残る場合があります。
| SKU | 月間販売数 | 平均在庫 | 月間回転率 |
|---|---|---|---|
| Mサイズ | 60 | 20 | 3.0回 |
| Lサイズ | 40 | 20 | 2.0回 |
| Sサイズ | 15 | 20 | 0.75回 |
| XLサイズ | 5 | 20 | 0.25回 |
商品全体だけを見ると販売されているように見えても、 SKU別では在庫効率に大きな差があることが分かります。
次回発注では、 M・Lサイズを多め、 S・XLサイズを少なめにするなど、 実際の販売速度へ発注構成を近づけます。
在庫回転率を改善する6つの方法
1 発注量を販売速度に合わせる
過去の発注量をそのまま繰り返さず、 直近の販売速度から必要数量を見直します。
2 発注回数を小分けにする
仕入れ条件が許せば、 大量発注を少量・高頻度へ変更することで、 平均在庫を減らせる場合があります。
3 売れないSKUの追加発注を止める
滞留しているSKUへ追加在庫を入れないよう、 発注点や自動発注設定を見直します。
4 商品ページ・販促を改善する
商品自体に需要がある場合は、 商品ページ、価格、セット販売、メール、SNSなどを見直します。
5 滞留在庫を早めに見つける
30日・60日・90日などの基準で、 長期間動いていないSKUを定期的に抽出します。
6 発注結果を毎月振り返る
欠品した商品と在庫が余った商品を確認し、 次回の発注点・安全在庫・発注量へ反映します。
在庫回転率を月1回確認する手順
直近30日、60日、90日の販売数を確認します。
月初・月末在庫や日次在庫から平均在庫を算出します。
販売数量または売上原価と平均在庫を同じ基準で計算します。
回転率が急に下がっているSKUを抽出します。
発注停止、発注量変更、販促、値下げなど、 SKUごとの対応を決めます。
在庫回転率チェックリスト
計算
- 売上原価と在庫金額の基準をそろえている
- または販売数量と在庫数量をそろえている
- 期末在庫だけでなく平均在庫を利用している
- 同じ期間で比較している
分析
- SKU単位でも確認している
- 前月と比較している
- 前年同時期と比較している
- 季節性を考慮している
- リードタイムも確認している
改善
- 低回転SKUの追加発注を確認している
- 発注量を見直している
- 発注点・安全在庫を見直している
- 滞留在庫を定期的に確認している
- 欠品率も合わせて確認している
EC在庫回転率に関するFAQ
一定期間に在庫が何回販売され、 入れ替わったかを表す指標です。
在庫を売上に対して持ちすぎていないかを確認する際に利用します。
金額ベースでは 「期間中の売上原価 ÷ 平均在庫金額」で計算します。
SKU単位では、 「期間中の販売数量 ÷ 平均在庫数量」で確認する方法もあります。
必ずしも高いほどよいわけではありません。
高すぎる場合は在庫不足による欠品が発生していないか確認します。 回転率と欠品率を合わせて見ることが重要です。
すべてのECに共通する適正値はありません。
商品カテゴリ、利益率、季節性、仕入れリードタイム、 最低発注数量などによって適正な数値は異なります。
在庫回転率は一定期間に在庫が何回入れ替わったかを見る指標です。
在庫回転日数は、 平均すると在庫を何日保有しているかを日数で確認する指標です。
すぐに値下げする必要はありません。
販売速度、商品ページ、季節性、価格、 発注量などを確認してから対応を決めます。
小規模ECでは、まず月1回の確認から始めると管理しやすくなります。
売れ筋商品、季節商品、在庫金額の大きいSKUは、 より短い間隔で確認する方法もあります。
まとめ|在庫回転率から適正在庫を見直す
在庫回転率は、 売上に対して現在の在庫量が多いのか少ないのかを 判断するための基本的な指標です。
- 期間中の販売数量または売上原価を確認する
- 同じ期間の平均在庫を計算する
- 在庫回転率を算出する
- 在庫回転日数も確認する
- SKU単位で低回転商品を抽出する
- 発注量・発注点・安全在庫を見直す
- 翌月に結果を再確認する
在庫回転率が低いからといって、 すぐに値下げや処分をする必要はありません。
商品の販売速度、利益率、季節性、リードタイム、 欠品リスクを合わせて確認し、 自社の商品に合った在庫量を設定することが重要です。
まずは在庫金額の大きい商品や売れ筋SKUから、 月1回の在庫回転率確認を始めてみましょう。
