
ECサイトの検索ゼロ件とは、利用者がサイト内検索へ語句を入力したものの、検索結果に商品が1件も表示されない状態です。
実際には商品を販売していても、「リュック」と「バックパック」、「白」と「ホワイト」のように、利用者と商品データで使う言葉が違えば、検索システムによっては商品を見つけられないことがあります。
ほかにも、ブランド名の略称、ひらがな・カタカナの違い、英数字の全角・半角、よくある誤字、用途を表す言葉が商品データに登録されていないことなどが原因になります。
そこで必要になるのが、検索ログを確認し、表記ゆれ、類義語、略称、誤字などを検索辞書として整理する作業です。
ただし、検索された言葉を何でも同義語として追加すればよいわけではありません。意味の異なる言葉まで結び付けると、今度は関係のない商品が検索結果へ表示されます。
この記事では、ECサイトで検索結果が0件になる原因、辞書設計の考え方、検索語の分類方法、登録前後のテスト、改善KPIを実務の順番で解説します。
- 検索ゼロ件は商品不足だけでなく言葉の不一致でも発生する
- 最初に検索ログから実際のゼロ件語を集める
- 表記ゆれ・類義語・略称・誤字・属性語を分けて扱う
- 双方向の同義語と一方向の言い換えを区別する
- 辞書追加だけでなく商品データ自体も改善する
- 意味が広い言葉を安易に同義語へ登録しない
- 追加後はゼロ件だけでなく検索結果の関連性も確認する
- 検索結果クリック・再検索・商品到達まで測定する
ECサイトの検索ゼロ件とは
検索ゼロ件とは、サイト内検索を行った結果、該当商品が1件も返されない状態です。
商品自体が存在しない場合は正常な0件ですが、販売中の商品があるのに、検索語と商品データが一致しないため0件になる場合は改善余地があります。
| 検索語 | 商品側の表記 | 考えられる問題 |
|---|---|---|
| リュック | バックパック | 類義語 |
| ティーシャツ | Tシャツ | 表記ゆれ |
| PCバッグ | パソコンバッグ | 略称・言い換え |
| ホワイト | 白 | 色の表記ゆれ |
| 軽い 通勤 バッグ | 重量650g・ビジネスバッグ | 属性・用途データ不足 |
| ばっぐ | バッグ | 誤字・入力ゆれ |
販売していない商品や条件まで無理に検索結果へ出す必要はありません。改善対象は「販売中の商品があるのに、言葉の違いによって見つけられていない検索」です。
検索結果が0件になる6つの原因
1.表記ゆれ
同じ意味でも、利用者によって入力方法が異なります。
- Tシャツ・ティーシャツ
- バッグ・バック
- ホワイト・白
- 2L・2リットル
- USB-C・USB Type-C
検索システムが自動的に吸収できる表記もありますが、利用しているECカートや検索サービスによって対応範囲は異なります。
2.類義語が登録されていない
商品名とは異なる一般的な呼び方で検索される場合があります。
- リュック・バックパック
- 運動靴・スニーカー
- 財布・ウォレット
3.ブランド名や商品名の略称
正式名称より短い名称で検索される商品があります。
実際の検索ログに略称が繰り返し現れる場合は、検索対象フィールドや辞書への追加を検討します。
4.誤字・入力ミス
スマートフォン入力などでは、濁点の抜け、文字順の違い、似た文字の入力などが発生します。
ただし、想定できる誤字を大量に手作業で登録するのではなく、利用中の検索機能にタイポ許容機能があるかも確認してください。
5.商品属性が不足している
商品名が一致していても、利用者が用途や特徴から探す場合があります。
「軽い 通勤 バッグ」
この検索へ対応するには、商品データに重量、用途、サイズ、素材などが登録されている必要があります。
6.本当に該当商品がない
この場合は辞書登録では解決できません。
関連カテゴリ、近い条件の商品、条件解除、再検索など、次の行動を案内します。
EC検索の辞書設計とは
EC検索における辞書設計とは、利用者が使う言葉と、ショップ側の商品データを検索時に結び付けるためのルールを整理することです。
検索サービスによって名称や機能は異なりますが、一般的には次のような対応があります。
| 種類 | 例 | 使い方 |
|---|---|---|
| 表記ゆれ | ホワイト・白 | 同じ属性を違う表記で探せるようにする |
| 双方向類義語 | リュック ⇔ バックパック | どちらで検索しても同じ概念を扱う |
| 一方向類義語 | PCバッグ → パソコンバッグ | 片方の検索だけ対象を広げる |
| 略称 | Type-C → USB Type-C | 一般的な短縮表現へ対応する |
| 誤字補正 | バック → バッグ | 入力ミスを補正する |
| 属性語 | 軽量・通勤・防水 | 商品データの条件検索へ利用する |
検索サービスによっては、通常の同義語と一方向の同義語を分けて設定できます。
たとえばAlgoliaでは、複数語を同等として扱う通常のsynonymと、特定の検索語からのみ別表現へ展開するone-way synonymが提供されています。
Algoliaの同義語設定に関する公式ドキュメントを確認する
「雨の日」と「防水」のように関連はあっても同じ意味ではない言葉を完全な同義語として登録すると、検索結果が広がりすぎる場合があります。
検索ゼロ件を改善する7つの手順
サイト内検索ログから、結果が0件だった検索語と検索回数を取得します。
商品自体が存在しない語句と、存在するのに検索できない語句を分けます。
表記ゆれ、類義語、略称、誤字、属性不足、商品なしへ分類します。
ショップ全体で意味が同じなら辞書、特定商品の特徴なら商品属性へ登録します。
検索回数、商品売上、対象商品数などから優先順位を付けます。
対象語だけでなく、逆方向の検索や似た言葉でも結果を確認します。
ゼロ件率、検索結果クリック、再検索、商品ページ到達を比較します。
ゼロ件検索語を分類する方法
辞書登録する前に、検索語を表にまとめます。
| 検索語 | 検索回数 | 商品有無 | 分類 | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| リュック | 確認値 | あり | 類義語 | バックパックとの関連を検討 |
| 白 バッグ | 確認値 | あり | 表記ゆれ | ホワイト属性と対応 |
| 軽い バッグ | 確認値 | あり | 属性不足 | 重量データを整備 |
| キッズ 30cm 靴 | 確認値 | なし | 商品なし | 近いサイズやカテゴリへ案内 |
意味が曖昧な語句や、対象商品が極端に広い語句は、検索回数が多くてもそのまま同義語へ追加しない方がよい場合があります。
双方向類義語と一方向類義語を使い分ける
双方向で扱いやすい例
- リュック ⇔ バックパック
- 財布 ⇔ ウォレット
- 運動靴 ⇔ スニーカー
ショップ内で同じ商品群を指し、どちらから検索しても同じ結果で問題ない場合の候補です。
一方向で検討したい例
- PCバッグ → パソコン収納バッグ
- プレゼント → ギフト対応商品
- 初心者向け → 初心者向け属性の商品
検索語の意味を広げたいものの、逆方向まで完全に同じ結果にしたくない場合があります。
検索結果が広がりすぎると、0件は減っても関連性の低い商品が増えます。0件率と検索結果の品質を同時に確認してください。
類義語ではなく商品属性へ入れる言葉
利用者が使う言葉のすべてを辞書へ追加する必要はありません。
商品の特徴そのものを表す言葉は、商品属性として管理した方が使いやすい場合があります。
| 属性 | 登録例 |
|---|---|
| 用途 | 通勤、旅行、アウトドア |
| 機能 | 撥水、防水、折りたたみ |
| 重量 | 650g |
| 対応サイズ | A4、13インチPC |
| 対象者 | 初心者、子ども、法人 |
| 使用時期 | 夏、冬、梅雨 |
「軽量」を辞書へ大量登録するより、商品の実重量を登録し、検索システム側でどの商品を軽量として扱うか決められる方が管理しやすい場合があります。
誤字・表記ゆれへの対応
確認したい表記ゆれ
- ひらがな・カタカナ
- 全角・半角
- 英字の大文字・小文字
- ハイフン・スペース
- 長音符の有無
- 数字と漢数字
- 単位表記
ただし、検索エンジン側で正規化されるものまで、すべて手動で辞書登録する必要はありません。
まず現在利用している検索機能の仕様を確認し、それでも0件になる表記だけを追加します。
誤字への対応
検索サービスにタイポ許容機能がある場合は、誤字辞書を大量に作る前にその設定を確認します。
特定の商品名やブランド名だけ繰り返し誤入力される場合は、個別の補正ルールを検討します。
辞書登録の優先順位を決める
ゼロ件語をすべて同時に修正する必要はありません。
| 判断項目 | 確認すること |
|---|---|
| 検索回数 | 繰り返し検索されているか |
| 商品有無 | 実際に販売商品が存在するか |
| 対象商品数 | 何商品に影響するか |
| 商品重要度 | 主力商品・主力カテゴリか |
| 意味の明確さ | 検索意図を一意に解釈できるか |
| 副作用 | 関係のない商品まで増えないか |
優先しやすい検索語
- 繰り返し0件になっている
- 該当商品を現在販売している
- 意味が明確である
- 主力商品へ関係している
- 辞書または属性修正で対応できる
慎重に扱う検索語
- 意味が複数ある
- 抽象的すぎる
- 一度しか検索されていない
- 対応商品が存在しない
- 検索結果が大量に広がる
辞書登録後に必ず行うテスト
辞書を追加したら、0件が解消されたことだけで成功と判断しません。
対象語を確認する
- 目的の商品が表示される
- 重要商品が適切な位置に表示される
- 在庫切れだけが並ばない
- カテゴリ違いの商品が増えすぎていない
逆方向も確認する
双方向類義語を設定した場合は、どちらの言葉から検索しても不自然な結果になっていないか確認します。
複合検索も確認する
- 白 リュック
- 軽量 リュック
- 通勤 リュック
- 防水 リュック
単語単体では正常でも、複数語で検索すると対象が広がりすぎる場合があります。
検索サービスによっては、同義語を過剰に追加すると意図しない商品まで検索対象になる可能性があります。検索ログと実際の結果を見ながら必要なルールだけを残します。
本当に商品がない0件検索への対応
販売商品が存在しない検索では、無理に別商品を同義語で表示するより、0件ページ自体を改善します。
0件ページに用意したい内容
- 検索語の表示
- 入力内容の修正方法
- 関連カテゴリ
- 近い条件の商品
- 条件を減らす方法
- 再検索フォーム
- 必要に応じて問い合わせ先
0件になった理由と関係なく人気商品を並べるだけでは、利用者の検索目的を解決できません。まず検索条件に近い選択肢を提示します。
検索ゼロ件対策で確認するKPI
| KPI | 確認する内容 |
|---|---|
| ゼロ件率 | 全検索のうち結果が0件だった割合 |
| ゼロ件語数 | 異なる0件検索語がどれだけあるか |
| 検索結果クリック率 | 検索結果から商品が選ばれたか |
| 再検索率 | 結果が合わず検索し直していないか |
| 検索後商品到達率 | 検索から商品ページへ進んだか |
| 検索後カート追加率 | 見つけた商品が購入候補になったか |
ゼロ件率=検索結果が0件だった検索回数÷全検索回数×100
検索結果クリック率=検索結果から商品がクリックされた検索回数÷検索結果が表示された検索回数×100
辞書を広げれば0件率だけは下げられる場合があります。関連性の低い商品が増えていないか、検索結果クリック率や再検索率も一緒に確認してください。
辞書を継続管理する方法
辞書は一度作って終わりではありません。
新商品、季節商品、ブランド追加、顧客が使う言葉の変化によって、必要な検索語も変わります。
辞書台帳に記録する項目
- 登録した検索語
- 対応先の語句・属性
- 双方向・一方向の区別
- 追加理由
- 元となった検索ログ
- 登録日
- 確認担当者
- テスト結果
- 変更・削除履歴
確認頻度を一律に「毎月」と決める必要はありません。
検索数、新商品追加、カテゴリ変更、検索システムの更新などに合わせて確認します。
自然文・画像検索へ発展させる場合
辞書と商品属性を整えることは、自然な文章による検索や画像検索へ進む場合にも役立ちます。
ただし、辞書検索とマルチモーダル検索は同じ仕組みではありません。
- 辞書設計:言葉の違いを吸収する
- 商品属性:色、サイズ、用途などを検索可能にする
- 自然文検索:複数条件を文章から解釈する
- 画像検索:商品画像と利用者の画像を比較する
EC辞書設計でよくある失敗
ゼロ件語をすべて同義語にする
商品が存在しない検索や、意味が曖昧な語句は別の対応が必要です。
似た言葉をすべて双方向にする
一方向だけ検索範囲を広げた方が適切な言葉もあります。
商品属性不足を辞書だけで補う
重量、サイズ、用途などは商品データ自体へ登録します。
登録後に検索結果を確認しない
0件が解消しても、無関係な商品が増えていれば改善とは言えません。
検索回数1回の語句まで大量登録する
母数と商品重要度を確認し、影響の大きい検索から対応します。
辞書の変更履歴を残さない
いつ何を変更したか分からないと、検索結果が悪化した原因を追跡できません。
検索ゼロ件対策チェックリスト
検索ログ
- ゼロ件検索を取得できる
- 検索回数を確認できる
- 検索結果クリックを確認できる
- 再検索を確認できる
分類
- 表記ゆれを分けた
- 類義語を分けた
- 略称を分けた
- 誤字を分けた
- 商品属性不足を分けた
- 商品なしを分けた
辞書登録
- 双方向と一方向を区別した
- 意味が曖昧な語句を無理に登録していない
- 既存検索機能の正規化・タイポ機能を確認した
- 変更理由を記録した
商品データ
- 商品ID・SKUが整理されている
- 色、サイズ、素材を登録している
- 用途・機能を必要に応じて登録している
- 価格・在庫が最新である
テスト
- 対象語を検索した
- 逆方向も確認した
- 複合検索も確認した
- 関係のない商品が増えていない
- スマートフォンでも確認した
ECサイトの検索ゼロ件対策に関するFAQ
ECサイトの検索ゼロ件とは何ですか?
利用者がサイト内検索を行ったものの、検索結果に商品が1件も表示されない状態です。
検索ゼロ件はすべてなくすべきですか?
いいえ。販売していない商品を検索された場合など、正常な0件もあります。販売商品が存在するのに言葉の違いで見つからない検索を優先して改善します。
EC辞書設計とは何ですか?
表記ゆれ、類義語、略称、誤字などを整理し、利用者が使う検索語と商品データを結び付けるための検索ルールを設計することです。
リュックとバックパックは同義語登録してよいですか?
自店で同じ商品群を指すなら候補になります。ただし、実際の検索結果を確認し、意図しない商品まで広がらないかテストしてください。
検索された語句を商品説明へ全部追加すればよいですか?
必要ありません。全商品に共通する言い換えは辞書、商品の特徴は属性、本文として必要な情報だけ商品説明へ反映するなど、役割を分けます。
辞書登録後は何を確認しますか?
ゼロ件が解消されたかだけでなく、検索結果の関連性、商品クリック、再検索、商品ページ到達を確認します。
AI検索を導入すれば辞書設計は不要ですか?
必ずしも不要にはなりません。検索方式によって必要なデータは異なりますが、商品名、カテゴリ、属性、用途などを整理しておくことは検索品質の基盤になります。
まとめ
- 検索ログから0件語を取得する
- 販売中の商品が存在するか確認する
- 表記ゆれ・類義語・略称・誤字・属性不足へ分類する
- 辞書と商品データのどちらで直すか決める
- 影響の大きい語句から修正する
- 双方向・一方向の関係を判断する
- 対象語・逆方向・複合語をテストする
- 検索結果クリックと再検索を確認する
- 変更履歴を残して継続改善する
ECサイトの検索ゼロ件は、販売商品がない場合だけでなく、利用者とショップ側で使う言葉が異なることでも発生します。
まず検索ログから0件語を抽出し、表記ゆれ、類義語、略称、誤字、商品属性不足、商品なしへ分類してください。
同じ意味として扱える言葉は辞書の候補になりますが、関連しているだけの言葉まで同義語にすると、検索結果が広がりすぎることがあります。
用途、サイズ、重量、素材など商品の特徴は、辞書だけでなく商品属性として整備します。
辞書登録後は、ゼロ件率だけでなく、検索結果クリック、再検索、商品ページ到達を比較します。
0件を無理にゼロへ近づけることではなく、販売している商品を利用者の言葉で正しく見つけられる状態を作ることが目的です。