コロナ禍がEC市場に与えた影響|2019〜2024年の推移と購買行動の変化

コロナ禍前後のEC市場規模と購買行動の変化

新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本のEC市場に大きな変化をもたらしました。

外出自粛や店舗の休業・営業時間短縮をきっかけに、実店舗を中心に買い物をしていた人もオンライン購入を利用する機会が増え、特に物販系ECは2020年に大きく拡大しました。

ただし、「コロナでEC全体が一様に伸びた」「コロナをきっかけに起きた変化がすべてそのまま続いた」と理解するのは正確ではありません。

物販、サービス、デジタルでは影響が異なり、2021年以降は市場の伸び方も変化しています。

この記事では、経済産業省の電子商取引市場調査をもとに、コロナ前の2019年から2024年までのEC市場を振り返り、購買行動、商品需要、物流、オンラインショップ運営に何が起きたのか、そしてどの変化がコロナ後も残ったのかを整理します。

この記事の要点
  • 物販系BtoC-ECは2019年から2020年に大きく拡大した
  • 2020年の物販系EC市場は前年比21.71%増だった
  • EC市場全体が同じように伸びたわけではない
  • サービス系ECは旅行等の影響で2020年に縮小した
  • 一時的な需要増と、その後も残る構造変化は分けて考える必要がある
  • コロナ後も物販EC市場規模とEC化率はコロナ前を上回っている
  • 商品情報、スマホ、配送、返品などオンライン購入体験の重要性が高まった
  • 今後は「コロナ対策」より現在の顧客行動に合わせて改善することが重要

コロナ前後でEC市場はどう変化したのか

最も分かりやすい変化は、物販系BtoC-EC市場の急拡大です。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年の物販系BtoC-EC市場は10兆515億円でした。

2020年には12兆2,333億円となり、前年比21.71%増加しています。EC化率も6.76%から8.08%へ上昇しました。

物販系BtoC-EC市場規模 EC化率
2019年 10兆515億円 6.76%
2020年 12兆2,333億円 8.08%
2021年 13兆2,865億円 8.78%
2022年 13兆9,997億円 9.13%
2023年 14兆6,760億円 9.38%
2024年 15兆2,194億円 9.78%

経済産業省「電子商取引に関する市場調査」

2020年だけ伸び方が大きく異なる

2020年には物販系ECが急拡大しましたが、その後は伸び率が落ち着いています。一方、市場規模そのものは2024年まで拡大しており、コロナ前の水準へ戻ったわけではありません。

なぜ2020年に物販ECが大きく伸びたのか

経済産業省は、2020年の物販系EC拡大について、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「巣ごもり消費」の影響を挙げています。

外出を控える動きや店舗営業への制限が重なり、これまで実店舗で購入されていた商品の一部がオンラインへ移りました。

オンライン購入が選ばれやすくなった背景

  • 外出を減らす必要があった
  • 店舗が休業・営業時間短縮となった
  • 自宅で過ごす時間が増えた
  • 在宅勤務が増えた
  • 食品や日用品もオンラインで購入する機会が増えた
  • オンラインで注文し自宅で受け取る利便性が認識された

経済産業省の2020年度調査では、当時の通常の成長傾向を前提にした場合より、巣ごもり消費によって物販系EC市場が大きく押し上げられたと分析されています。

経済産業省「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」

EC市場全体が同じように伸びたわけではない

「コロナでEC市場が伸びた」という表現だけでは、実態を十分に説明できません。

2020年には、物販系BtoC-ECが大きく伸びる一方、旅行、飲食、チケットなどを含むサービス系ECは大きな影響を受けました。

分野 2020年の主な変化 背景
物販系 大幅に拡大 巣ごもり消費・オンライン購入増加
サービス系 大幅に縮小 旅行・イベント等の需要減少
デジタル系 拡大 自宅で利用できるコンテンツ需要

2020年のサービス系BtoC-EC市場は前年比36.05%減となる一方、デジタル系は14.90%増加しました。

「EC」という一括りだけで判断しない

市場動向を見るときは、物販・サービス・デジタルのどの分野かまで確認する必要があります。同じ社会変化でも商品・サービスによって影響は異なります。

コロナ禍がECへ与えた主な7つの影響

1.オンライン購入を試す人が増えた

それまで実店舗中心だった人も、食品、日用品、家電、生活雑貨などをオンラインで購入する機会が増えました。

この時期に初めてECを利用した人にとっては、注文、決済、自宅配送という一連の体験そのものが新しい購買選択肢になりました。

2.日常消費の商品までEC利用が広がった

ECは書籍や家電などだけではなく、食品、飲料、日用品など日常的に使用する商品でも利用が広がりました。

一方で、感染対策用品や在宅勤務関連商品のように、特定期間へ需要が集中した商品もあります。

一時的な需要と継続需要は分ける

一時的に販売数が急増しても、その販売量が長期間続くとは限りません。需要変化を仕入れへ反映するときは、直近販売数、検索需要、再購入、在庫状況などを確認します。

3.購入前の情報収集がオンラインへ移った

店舗で実物を確認しにくくなったことで、商品写真、サイズ、仕様、動画、レビュー、送料、返品条件など、オンライン上の情報が購入判断でさらに重要になりました。

この変化は現在の商品ページ改善にもつながっています。

4.スマートフォン経由のEC利用がさらに拡大した

スマートフォンへの移行はコロナ以前から進んでいましたが、オンライン購入が増えたことで、その重要性がさらに高まりました。

経済産業省の調査では、2020年の物販系BtoC-EC12兆2,333億円のうち、スマートフォン経由は6兆2,269億円で、50.9%でした。

つまり、コロナだけがスマホECを生んだわけではありませんが、EC市場の拡大とスマートフォン利用の増加が同時に進んだ時期だったと考えられます。

5.在庫と物流の重要性が表面化した

注文が急に増えると、販売ページだけでなく、仕入れ、在庫、ピッキング、梱包、発送の処理能力が必要になります。

コロナ禍では需要変動や物流への負荷も加わり、「売れること」と「安定して届けられること」は別の問題であることが明確になりました。

6.購入後の情報提供が重要になった

EC利用者が増えると、注文状況、発送予定、追跡番号、返品・交換などについての問い合わせも発生します。

購入後の顧客は、商品だけでなく「いつ届くのか」「問題が起きたらどうすればよいか」も含めてショップを評価します。

7.新規獲得だけでなく顧客維持も重要になった

EC利用が一般化し競合ショップも増えると、一度購入されたことだけでは継続的な売上になりません。

初回購入後に再購入される商品、購入間隔、関連商品など、既存顧客の行動を見ながら改善する重要性が高まりました。

コロナ禍で商品カテゴリの需要はどう変わったか

生活様式の変化に伴い、自宅での生活、仕事、食事、運動、娯楽に関連する商品への需要が高まりました。

需要が増えやすかった分野

  • 食品・飲料
  • 日用品
  • 衛生用品
  • パソコン・周辺機器
  • 在宅勤務関連用品
  • 家具・インテリア
  • 調理用品
  • 自宅での運動関連商品
  • デジタルコンテンツ

影響を受けやすかった分野

  • 旅行
  • イベント
  • チケット
  • 外出を前提とするサービス
  • 一部の外出・行事関連商品
当時売れた商品=現在も売れる商品ではない

2020年の販売実績だけを現在の仕入れ基準にするのは適切ではありません。現在の需要、販売数、検索動向、リピート状況から判断する必要があります。

一時的だった変化と、その後も残った変化を分ける

コロナ禍の影響を現在のEC運営へ活かすには、「当時だけ強かった需要」と「現在にもつながる構造変化」を分けることが重要です。

変化 考え方
感染対策用品の急増 一時的需要の影響が大きい
在宅勤務関連商品の急増 生活様式変化とともに需要も変化
物販EC市場の拡大 2024年もコロナ前を上回る
オンラインでの情報収集 現在の購買行動にも残る
スマートフォン利用 コロナ以前から進行し、その後も拡大
配送・返品情報の重要性 オンライン購入の基本要件として残る

コロナ後もEC市場は縮小しなかった

2020年のような20%を超える物販ECの伸び率は続きませんでした。

しかし、2024年の物販系BtoC-EC市場は15兆2,194億円、EC化率は9.78%となっています。

2019年の10兆515億円・6.76%と比べると、コロナ後も市場規模・EC化率ともに高い水準です。

経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」

「コロナ特需が終わった」と「ECが元に戻った」は別

2020年の急激な成長率は一時的でしたが、物販EC市場自体がコロナ前の規模へ戻ったわけではありません。急成長の終了と市場縮小を混同しないことが重要です。

現在にもつながる購買行動の変化

現在の購買行動をすべてコロナ禍だけで説明することはできません。

スマートフォン、SNS、レビュー、ECサービス、物流、キャッシュレス決済などの変化は以前から進んでいました。

そのうえで、コロナ禍はオンライン購入を利用する機会を大きく増やし、次のような行動を定着させる一因になったと考えるのが適切です。

  • 購入前にオンラインで商品情報を調べる
  • レビューや口コミを比較する
  • スマートフォンで商品を探して購入する
  • 送料・配送予定を購入前に確認する
  • 返品・交換条件を確認する
  • オンラインと実店舗を使い分ける

コロナ禍からEC事業者が学べる5つのこと

1.急増した需要をそのまま将来予測にしない

特殊要因で増えた販売量と通常需要を分けて判断します。

2.販売量と処理能力を一緒に考える

注文増加に在庫・発送・問い合わせが耐えられるか確認します。

3.商品情報も接客の一部と考える

写真、仕様、送料、納期、返品条件などをオンラインで確認できるようにします。

4.一つの販売チャネルだけに依存しない

商品と顧客に応じてEC・店舗・SNS等の役割を考えます。

5.過去ではなく現在の顧客データで判断する

過去の特需より、現在の販売数・購入率・再購入・問い合わせを優先します。

コロナとEC市場で誤解しやすいこと

コロナによってEC全体が伸びた

正確ではありません。2020年は物販・デジタルが伸びた一方、サービス系ECは大幅に縮小しました。

EC市場は2020年だけ成長した

2020年の伸び率が特に大きかったのは事実ですが、その後も物販系市場規模は拡大しています。

スマホECはコロナで始まった

スマートフォンへの移行はコロナ以前から進んでいました。コロナ禍はオンライン購入拡大と重なった要因の一つとして考えます。

コロナ時代に売れた商品は今後も売れる

需要は生活様式によって変化します。現在の販売データで判断してください。

オンライン購入が増えれば実店舗は不要になる

ECと実店舗は二者択一ではありません。商品確認、受け取り、再購入などで相互に補完できます。

コロナとEC市場に関するFAQ

コロナで日本のEC市場はどのくらい伸びましたか?

物販系BtoC-EC市場は2019年の10兆515億円から2020年の12兆2,333億円へ増え、前年比21.71%増となりました。EC化率も6.76%から8.08%へ上昇しています。

コロナでEC市場全体が伸びたのですか?

一様には伸びていません。物販系ECは大きく伸びましたが、旅行などを含むサービス系ECは2020年に大きく縮小しました。

コロナ後にEC市場は縮小しましたか?

2020年ほどの急成長率ではありませんが、物販系BtoC-EC市場規模はその後も拡大しています。2024年は15兆2,194億円、EC化率9.78%です。

コロナ後も残った購買行動の変化は何ですか?

オンラインでの情報収集、レビュー比較、スマートフォン利用、配送・返品条件の確認などは現在のECでも重要です。ただし、これらすべてをコロナだけが原因と考えるのではなく、以前から進んでいたデジタル化も含めて考える必要があります。

現在のEC事業者もコロナ時代の売上データを使えますか?

参考にはできますが、そのまま将来需要の予測には使わない方が安全です。特殊需要が含まれている可能性があるため、現在の販売数、検索需要、再購入、在庫などと比較してください。

まとめ

コロナ禍がEC市場へ与えた影響
  • 2020年に物販系BtoC-EC市場が大きく拡大した
  • オンライン購入を利用する人・商品カテゴリが広がった
  • 商品情報やスマートフォン対応の重要性が高まった
  • 在庫・物流・問い合わせの処理能力が課題になった
  • サービス系など大きく落ち込んだEC分野もあった
  • 2020年の急成長率は続かなかった
  • それでも2024年の物販EC市場はコロナ前より大きい

コロナ禍は、日本のEC市場にとって大きな転換点の一つでした。

特に2020年は物販ECが急拡大し、これまでオンライン購入をあまり利用していなかった人にもECが広がりました。

一方で、すべてのEC分野が伸びたわけではなく、感染対策用品など一時的な特需もありました。

現在のEC運営で重要なのは、2020年当時の施策をそのまま再現することではありません。

コロナ禍を市場変化の事例として理解したうえで、現在の顧客がどのように商品を探し、比較し、購入し、再購入しているかを最新データから判断することです。

現在の顧客行動を基準に次の施策を決める

コロナ禍の販売実績だけで現在の戦略を決めず、直近のアクセス、購入、再購入、問い合わせ、在庫などを確認してください。現在の購買行動との違いを理解することが、次の改善を決める出発点になります。

現在の購買行動を確認する

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