ECフルフィルメントとは?物流外注の判断基準

ECフルフィルメントを適切な時期に導入することは、配送品質を安定させ、オンラインショップのブランド価値を守るうえで重要です。

たとえば、1日30件を発送するとします。

1件あたり12分なら、発送関連だけで1日6時間です。

月20営業日なら120時間。

時給2,000円相当で考えると、月24万円分の作業になります。

しかも、実際には梱包だけではありません。

入荷。

検品。

棚入れ。

在庫確認。

送り状発行。

返品処理。

資材発注まであります。

売上が伸びているのに、担当者が毎日夕方まで梱包している。

この状態になると、商品企画や集客改善へ時間を使えません。

そこで検討したいのが、ECフルフィルメントの外注です。

ただし、出荷件数が増えたから即外注すればよいわけでもありません。

外注すると固定費や作業費が発生します。

また、特殊梱包や細かな同梱対応が難しくなる場合もあります。

この記事では、

「何を外注できるのか」

「何件から検討すべきか」

「自社発送とどちらが得なのか」

を具体的に整理します。

まず自社業務の整理から始めたい方は、「EC運営マニュアルの作り方|新人でも迷わない業務チェックリスト」も参考にしてください。

今どの作業に時間を使っているか見えると、物流外注の効果を判断しやすくなります。

ECフルフィルメントとは?発送代行との違い

ECフルフィルメントは、注文後に必要な物流業務をまとめて管理する仕組みです。

単なる「箱詰め代行」ではありません。

一般的には、次のような業務が対象になります。

・商品の入荷
・入荷検品
・保管
・在庫管理
・受注データ連携
・ピッキング
・検品
・梱包
・送り状発行
・発送
・返品商品の受け入れ

サービスによっては、ギフト包装や同梱物対応まで含まれます。

一方、「発送代行」という言葉は、梱包・発送だけを指す場合もあります。

また、3PLという言葉もよく使われます。

3PLは「Third Party Logistics」の略です。

物流業務を外部の専門事業者へ委託する考え方を指します。

初心者の場合は、

「フルフィルメント=購入後業務全体」

「発送代行=発送周辺中心」

程度から理解すれば十分です。

ただし、実際のサービス範囲は事業者ごとに違います。

名前だけで判断してはいけません。

よくある失敗は、

「発送代行と書いてあったので返品処理もやってくれると思った」

というケースです。

実務では、契約前に業務を1工程ずつ確認します。

サービス名称より、どこからどこまで担当するかを確認することが重要です。

物流業務を7工程へ分けると外注範囲が見える

物流業務は、工程ごとに分解してから外注を考えます。

全部外注する必要はありません。

まず次の7工程へ分けます。

  1. 入荷
  2. 保管
  3. 在庫管理
  4. ピッキング
  5. 検品・梱包
  6. 発送
  7. 返品処理

たとえば、小規模ショップで最も時間がかかっているのが梱包だとします。

それなら、最初から受注管理まで外注する必要はありません。

一方、倉庫スペースそのものが不足しているなら、保管から任せる価値があります。

想定例です。

月間出荷:400件
1件のピッキング・梱包:10分
送り状・発送処理:1件3分

1件13分。

400件なら5,200分です。

約86時間40分になります。

ここへ入荷や棚卸しを加えると、月100時間を超えることもあります。

実務では、まず各工程へ作業時間を付けます。

Googleスプレッドシートで十分です。

たとえば、

入荷:月8時間
在庫確認:月10時間
梱包:月55時間
発送処理:月20時間
返品:月5時間

と記録します。

すると、どこを外注すると効果が大きいか見えてきます。

よくある失敗は、

「物流が大変だから全部外注」

と決めることです。

実際には、商品撮影用の在庫を社内に残したい場合もあります。

特殊な同梱作業だけ自社で行いたい場合もあります。

外注単位は会社単位ではなく、工程単位で考えてください。

自社発送とECフルフィルメントを数字で比較する

外注判断では、外注料金と「今払っている見えない物流費」を比較します。

自社発送は無料ではありません。

人件費。

場所代。

梱包資材。

作業設備。

採用・教育時間。

これらがかかっています。

想定例で計算します。

月間出荷300件。

物流業務が月60時間。

担当者コストを時給2,000円とします。

人件費相当は、

60時間×2,000円
=12万円

です。

さらに、

在庫保管スペース:月3万円相当
資材管理・備品:月1万円
臨時作業:月2万円

と仮定します。

物流関連で月18万円です。

一方、外注見積もりが、

保管・システム等:月5万円
作業費:1件300円
その他作業:月2万円

だったと仮定します。

300件×300円
=9万円

合計16万円です。

この条件なら、数字上は外注が2万円低くなります。

ただし、これはあくまで計算例です。

実際には、

入庫料
保管料
出庫料
梱包料
資材料
配送料
返品処理料
システム利用料

など、事業者ごとに料金体系が異なります。

そのため、1件単価だけで比較しないことが重要です。

実務者としては、

月間総物流費 ÷ 月間出荷件数

まで出します。

自社発送が600円/件。

外注が550円/件。

こうして初めて比較しやすくなります。

外注を検討すべき5つのサイン

出荷件数より「物流が事業成長を止めているか」で判断します。

月間○件になったら必ず外注。

という絶対的な基準はありません。

小型商品と大型家具では作業量が違うからです。

ただし、判断用の目安は作れます。

1日2時間以上を梱包へ使っている

1日2時間。

月20営業日なら40時間です。

担当者が週1日分を物流へ使っている計算になります。

商品企画やマーケティング担当者まで梱包しているなら、外注検討の優先度は高めです。

月200〜300件を超えて出荷が不安定になってきた

これはあくまで小規模EC向けの目安です。

商品サイズや作業内容で変わります。

重要なのは件数そのものではありません。

「繁忙日に翌日出荷へずれ始めた」

といった品質変化を見ることです。

物流作業のためにアルバイト採用を検討している

新たに採用する前に、外注見積もりと比較します。

月80時間必要なら、

時給1,300円で約10万4,000円です。

採用、教育、シフト管理も必要になります。

在庫が事務所を圧迫している

オフィスの20〜30%が商品箱で埋まっている。

この状態なら、保管場所のコストも見直します。

作業効率だけでなく、安全性にも影響します。

誤出荷・発送遅延が増えている

たとえば月500件中5件の誤出荷なら1%です。

1件30分の再対応。

再送料800円。

商品回収800円。

これだけでもコストが積み上がります。

実務では、物流ミスが増え始めた時点を外注検討のサインとして見ます。

外注しないほうがよいECもある

すべてのショップにECフルフィルメントが向くわけではありません。

自社発送を続けたほうがよいケースもあります。

たとえば、月30件しか発送しない場合です。

作業時間が月5時間程度なら、外注固定費のほうが大きくなる可能性があります。

また、次のような商品も慎重に判断します。

・毎回違う手書きメッセージを入れる
・複雑なギフト包装がある
・受注後に商品を加工する
・一点物を扱う
・商品状態を細かく目視確認する
・大型・特殊形状商品を扱う

もちろん、対応できる物流会社もあります。

ただし、通常出荷より料金が高くなることがあります。

よくある失敗は、

「外注すれば今とまったく同じサービスを安く再現できる」

と思うことです。

現場ではよく、この部分でトラブルにつながるケースが多いです。

たとえば、自社では無料で行っていた個別ラッピングが、外注後は追加作業扱いになることがあります。

改善するには、現在の作業をすべて一覧化します。

特に、

手書き対応
ギフト包装
サンプル同梱
キャンペーンチラシ
予約商品の保管

は契約前に確認してください。

外注前に「今、無意識でやっている作業」を洗い出すことが重要です。

在庫連携できない物流外注は運用負担が残る

物流会社を選ぶときは、在庫データの連携を必ず確認します。

倉庫へ商品を預けても、在庫数がECサイトへ反映されなければ作業は残ります。

たとえば、

EC側:在庫12個
倉庫側:在庫9個

となった場合です。

3個の差異があります。

この状態で12個販売すると、欠品が発生します。

そのため、確認したいのは、

・ECカートとの連携
・在庫反映タイミング
・複数店舗との在庫共有
・返品商品の在庫戻し
・在庫差異の報告方法

です。

Shopifyなど主要なEC基盤との連携を提供するサービスもあります。

また、WMSと呼ばれる倉庫管理システムを使う場合もあります。

ただし、具体的な連携先や仕様はサービスで異なります。

最新情報を公式に確認してください。

よくある失敗は、

「CSV連携できるから大丈夫」

と判断することです。

毎朝人がCSVを出力し、アップロードする必要があるなら、自動化とは言えません。

実務では、

何分おきに同期するのか。

自動なのか手動なのか。

エラー時に誰へ通知されるのか。

ここまで確認します。

在庫管理そのものに課題がある方は、「EC在庫管理の方法|欠品・売り越しを防ぐ実務手順」も参考にしてください。

外注前に在庫ルールを整えておくと、倉庫との数量差異を減らしやすくなります。

返品対応まで外注できるか確認する

EC物流では、発送より返品のほうが判断工程が多くなります。

返品商品が倉庫へ届いたとします。

そこで必要になるのは、

・商品確認
・注文番号確認
・開封状態確認
・付属品確認
・破損確認
・再販売可否判定
・在庫戻し

です。

「受け取るだけ」なら簡単です。

しかし、

A:新品として再販売
B:アウトレットへ移動
C:廃棄

まで判断する場合はルールが必要です。

想定例なら、

未開封
→ A

開封済み・未使用
→ B

使用痕あり
→ C

というようにします。

ただし、商材によって基準は変わります。

実務では、返品判定を倉庫へ任せる前に写真付き基準書を作ります。

よくある失敗は、

「返品も対応可能です」

という一言だけで契約することです。

受け取りはできる。

でも検品は別料金。

再梱包も別料金。

という場合があります。

返品は「受領・検品・在庫戻し」を分けて確認してください。

繁忙期だけ外注する方法もある

物流外注は、全面移行だけが選択肢ではありません。

季節変動が大きいショップなら、繁忙期だけ検討できます。

たとえば通常月300件。

12月だけ1,500件になるショップです。

通常月のために5人雇うのは非効率です。

一方、繁忙期だけ作業人員を確保するのも大変です。

この場合は、

通常商品
→ 自社発送

セール対象商品
→ 外部倉庫

のように分ける方法があります。

また、

定番商品だけ外注。

ギフト商品だけ自社。

という方法もあります。

実務では、初回から全SKUを移動するより、売上上位20SKUだけでテストすると問題を見つけやすいです。

たとえば月500件のうち、上位20SKUが350件を占めるなら、そこだけ外注します。

3か月運用。

誤出荷。

配送速度。

在庫差異。

問い合わせ件数。

を確認します。

問題がなければ対象を増やします。

よくある失敗は、一度に全在庫を移すことです。

トラブルが発生すると全注文へ影響します。

物流外注も小さくテストしてから広げるほうが安全です。

ECフルフィルメント会社を比較する10項目

料金だけで物流会社を決めないでください。

比較する項目は次です。

  1. 初期費用
  2. 月額固定費
  3. 保管費
  4. 入出庫作業費
  5. 梱包費
  6. 配送料
  7. 返品処理費
  8. EC・在庫システム連携
  9. 当日出荷の締切時間
  10. 誤出荷時の対応

さらに自社独自業務があるなら、

・ギフト対応
・同梱物
・セット組み
・賞味期限管理
・ロット管理

なども確認します。

比較表を作るときは、実際の月間出荷数を使います。

たとえば300件、500件、1,000件。

3パターンで見積もります。

なぜなら、出荷数が増えると単価や保管量が変わる可能性があるからです。

よくある失敗は、

「現在300件だから300件だけ」

で見積もることです。

半年後に1,000件へ増えたとき、料金体系が合わなくなる場合があります。

実務者としては、現在・2倍・3倍の3パターンで見積もりを取る方法を勧めます。

物流会社を具体的に比較する段階なら、「ECフルフィルメントサービス比較」も参考にしてください。

料金だけでなく、保管条件、連携、返品、出荷締切を同じ条件で比較すると、契約後のミスマッチを減らせます。

物流外注の損益分岐点を計算する

外注判断は、月間出荷件数ではなく損益分岐点を出すと明確になります。

まず自社物流費を計算します。

自社物流費

人件費
+保管スペース
+資材
+設備
+物流管理時間

次に外注費です。

外注費

固定費
+保管料
+出荷件数×作業費
+配送料
+追加作業費

想定例です。

自社物流:

月間固定コスト10万円
1件あたり変動コスト450円

外注:

月間固定コスト4万円
1件あたり650円

この場合、

100,000+450X

40,000+650X

となります。

差額6万円を200円で割ります。

X=300件

想定上は月300件付近が分岐点です。

300件未満なら自社が有利。

300件を超えると外注が有利。

という計算になります。

もちろん、実際には配送契約や保管量で変わります。

ただし、この式を使えば感覚だけで決めずに済みます。

「忙しいから外注」ではなく、現在の物流費を数字にすることが最初です。

物流品質は4つのKPIで確認する

外注後も、物流を完全に見なくてよいわけではありません。

最低限4つの数字を確認します。

・出荷遅延率
・誤出荷率
・在庫差異率
・破損・返品件数

たとえば月1,000件。

誤出荷5件なら0.5%です。

翌月8件なら0.8%。

件数だけではなく率で見ます。

さらに原因を確認します。

商品バーコードが似ている。

棚位置が近い。

セット商品の登録が間違っている。

倉庫側だけの問題とは限りません。

実務では、外注開始後の最初の1か月は週1回確認します。

安定したら月1回でも構いません。

よくある失敗は、

「倉庫へ任せたので物流は見ない」

という状態です。

購入者から見れば、自社倉庫も外部倉庫も関係ありません。

配送ミスはショップの評価になります。

外注するのは作業であり、品質責任まで手放すわけではありません。

明日90分でできる物流外注の判断

明日は、物流会社を探す前に現在の物流コストを計算してください。

最初の30分。

直近1か月の物流業務を洗い出します。

・入荷
・棚入れ
・在庫確認
・ピッキング
・梱包
・発送
・返品

各作業の時間を書きます。

次の30分。

費用を出します。

・物流担当者の時間
・保管スペース
・資材
・配送関連
・臨時人員

最後の30分。

外注条件を書きます。

たとえば、

月間出荷:400件
SKU:150
必要保管量:棚20本分
当日出荷:15時締切希望
返品:月10件
ギフト対応:あり

という形です。

この状態で見積もりを依頼すれば、会社ごとの差を比較できます。

実務では、先に業者へ問い合わせると、

「どのくらい出荷しますか」

「何SKUありますか」

「どの作業を任せますか」

と聞かれて止まります。

先に自社条件を整理してください。

実践用に項目を一覧で確認したい方は、「EC物流外注チェックリスト|見積もり前に確認する20項目」も参考にしてください。

倉庫会社へ同じ条件で問い合わせられるため、見積もり比較がしやすくなります。

まとめ|ECフルフィルメントは「出荷件数」より時間と品質で判断する

ECフルフィルメントを外注する基準は、「何件売れたか」だけではありません。

見るべきなのは、

・物流作業時間
・人件費
・保管スペース
・誤出荷
・発送遅延
・繁忙期の負荷
・今後の出荷増加

です。

月300件でも、1件3分で発送できるなら自社運営が合うかもしれません。

反対に月150件でも、1件30分かかる特殊梱包なら外注を検討する価値があります。

まず現在の物流を7工程へ分けます。

入荷。

保管。

在庫。

ピッキング。

梱包。

発送。

返品。

そして各工程に時間と費用を付けます。

ECフルフィルメントの導入は、その後です。

いきなり全部を移す必要もありません。

売上上位商品だけ。

繁忙期だけ。

保管だけ。

このように部分外注から始める方法もあります。

明日は90分だけ使ってください。

物流作業時間。

月間出荷件数。

SKU数。

物流関連コスト。

この4つを出せば、外注判断の土台ができます。

具体的な委託先を比較する段階になったら、「ECフルフィルメントサービス比較」も確認してください。

料金、保管、返品、システム連携、出荷締切まで同じ条件で比較すると、安さだけで選ぶ失敗を防げます。

物流外注の目的は、箱詰めをなくすことではありません。

担当者の時間を、商品企画・顧客対応・サイト改善など、本来人が判断すべき仕事へ戻すことです。

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