越境EC市場動向2026|市場規模・地域別トレンドと今後の展望

2026年の越境EC市場規模と海外販売の地域別トレンド

越境EC市場は拡大していますが、「海外市場が伸びているから商品を出せば売れる」というほど単純ではありません。

越境ECでは、販売する国によって、利用されるECモール、決済方法、物流、関税・税金、輸入規制、SNS、返品への期待などが異なります。

そのため市場動向を見る目的は、「最も市場規模が大きい国を選ぶこと」ではありません。

自社商品を購入する可能性がある顧客がどこにいるのか、その国で販売するために何を確認しなければならないのかを把握することが重要です。

経済産業省の2024年調査では、日本・米国・中国3か国間の越境EC市場はいずれも前年から増加しました。

一方で、市場規模の数字は「どの国の消費者が、どの国の事業者から購入した金額なのか」を区別して読む必要があります。

この記事では、2026年時点で確認できる越境EC市場の最新データをもとに、日本・米国・中国の市場規模、海外から日本商品が購入されている状況、地域別に確認したい変化、今後の越境ECで重要になるポイントを整理します。

この記事の要点
  • 2024年の日本・米国・中国3か国間の越境ECはいずれも増加した
  • 中国消費者による日本事業者からの購入額は2兆6,372億円
  • 市場規模を見るときは「買い手の国」と「売り手の国」を区別する
  • 市場規模が大きい国が自社商品の最適市場とは限らない
  • 販売国ごとに規制・税・物流・決済・消費者行動を確認する
  • 越境ECでは市場データと自社商品の需要検証を分けて考える
  • 最初から全世界へ展開するより対象国を絞って検証する

越境EC市場動向とは

越境ECとは、インターネットを通じて国境を越えて商品・サービスを売買する電子商取引です。

越境EC市場動向を見る場合は、単純な市場規模だけでなく、次の変化を確認します。

  • 国・地域ごとのEC市場
  • 海外商品の購入動向
  • 日本商品の需要
  • 利用されるECモール
  • 決済手段
  • 国際物流
  • 関税・税制度
  • 輸入規制・認証
  • SNS・検索・動画などの商品発見経路
  • 返品・カスタマーサポートへの期待
市場規模だけで販売国を決めない

人口やEC市場が大きくても、自社商品の需要、競争、規制、送料、利益が合わなければ適切な市場とは限りません。市場データは候補国を考える材料として使います。

2024年の越境EC市場規模

経済産業省が2025年8月に公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」では、2024年の日本・米国・中国3か国間の越境EC市場規模はいずれも前年から増加しました。

消費者の国 越境EC購入額 前年比 購入先
日本 4,410億円 4.8%増 米国・中国
米国 2兆7,144億円 7.3%増 日本・中国
中国 5兆7,769億円 7.2%増 日本・米国

ここで注意したいのは、「日本4,410億円」は日本企業が海外へ販売した金額ではないことです。

日本の消費者が米国・中国の事業者から購入した越境EC額を意味します。

同様に、中国5兆7,769億円は、中国の消費者が日本・米国の事業者から購入した金額です。

経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」

「日本の越境EC市場=2兆6,372億円」と書かない

2兆6,372億円は、中国の消費者が日本事業者から購入した金額です。越境EC統計では、購入者の国と販売者の国を明確にして数字を読む必要があります。

海外から日本商品はいくら購入されているのか

日本事業者にとって特に重要なのは、「海外の消費者が日本からどれだけ購入しているか」です。

経済産業省の2024年推計では、中国消費者による日本事業者からの購入額は2兆6,372億円で、前年比8.5%増でした。

また、米国消費者による日本事業者からの購入額は1兆5,978億円です。

海外消費者 日本事業者からの購入額
中国 2兆6,372億円
米国 1兆5,978億円

この数字から、米国・中国の消費者による日本からの越境購入が大きな市場になっていることは確認できます。

ただし、これは日本商品すべてが同じように売れているという意味ではありません。

商品カテゴリー、ブランド、価格帯、配送条件、認知度、規制などによって販売可能性は大きく変わります。

市場規模と自社商品の需要を分ける

国全体の越境EC市場が大きいことと、自社商品の購入需要があることは別です。検索、モール、競合レビュー、問い合わせ、テスト販売などから商品単位で需要を確認します。

日本企業でも海外向けECへの関心が続いている

JETROの2025年度海外ビジネス調査では、ECを利用または利用検討している企業のうち、海外向け販売でECを活用・検討している企業が一定割合存在しています。

特に中小企業では、日本から海外へ直接販売する越境ECを選択する企業も確認されています。

ただし、越境ECは国内ECに販売先を追加するだけではありません。

JETROの2026年版越境EC基礎資料でも、国内ECとの違いとして国際物流、関税・VAT等の税、輸入規制、認証などの確認が挙げられています。

JETRO「越境EC」情報

JETRO「越境EC支援事業パートナー」

1.商品発見経路の多様化

海外顧客が日本商品を見つける入口は、検索エンジンやECモールだけではありません。

SNS、動画、レビュー、クリエイター、比較コンテンツなど複数の経路から商品を知る可能性があります。

重要なのは、特定のSNSが世界共通で強いと決めつけないことです。

利用されるプラットフォームは国、年齢、商品カテゴリーによって異なります。

確認すること

  • 対象国で商品がどこから発見されているか
  • 検索とSNSのどちらが重要か
  • 動画が購入判断に使われているか
  • レビューがどこで確認されているか
  • 競合ブランドがどのチャネルを使っているか

2.現地に合う決済への対応

日本で一般的な決済方法が、販売対象国でも同じように利用されるとは限りません。

利用するECプラットフォームや販売国によって、クレジットカード、ウォレット、銀行系決済、後払いなど必要な選択肢が変わります。

決済ブランド名を並べるだけで判断しない

「有名な決済方法だから導入する」のではなく、対象国の顧客が利用する方法、自社ECで利用可能か、手数料、通貨、返金方法を確認します。

3.物流・関税を含めた総支払額の分かりやすさ

越境ECでは、商品価格だけでなく国際送料、関税、税金などが購入判断へ影響します。

顧客が購入直前になって予想外の費用を知ると、離脱や受取拒否につながる可能性があります。

販売方式によって対応は異なりますが、少なくとも次の情報を整理します。

  • 商品価格
  • 表示通貨
  • 国際送料
  • 配送目安
  • 追跡可否
  • 関税・税金の扱い
  • 返品時の国際送料

4.規制・認証対応の重要性

国内で販売できる商品でも、そのまま海外へ販売できるとは限りません。

対象国や商品によって輸入規制、表示義務、認証、成分規制、知的財産などの確認が必要になります。

特に食品、化粧品、健康関連商品、電気製品などは、販売開始前の確認が重要です。

市場調査より先に販売可否を確認する商品もある

需要が確認できても、法令・輸入規制・認証の条件を満たせなければ販売できません。対象商品に必要な条件は、販売国の公的機関やJETRO等の最新情報から確認します。

5.海外販売でも顧客体験が競争要因になる

越境ECでは「日本の商品だから買われる」と考えるのではなく、海外顧客が安心して購入できる情報を整えることが重要です。

確認したい情報

  • 商品仕様
  • サイズ・容量
  • 素材・成分
  • 利用方法
  • 配送日数
  • 関税・税金
  • 返品条件
  • 問い合わせ方法

単に日本語の商品説明を機械翻訳するだけでは、海外顧客が知りたい情報の順番や比較軸まで一致するとは限りません。

「アジア」「欧米」と大きくまとめすぎない

越境ECの記事では、「アジアではSNS」「欧米ではサステナブル」といった地域分類が使われることがあります。

しかし、実際には同じ地域でも国によってECモール、決済、税、物流、購買行動は異なります。

調査単位 確認する内容
市場規模、人口、EC利用
商品カテゴリー 需要、競争、価格帯
販売チャネル モール、自社EC、SNS等
決済 利用される支払方法
物流 送料、日数、追跡
規制 輸入可否、認証、表示
購入理由 品質、デザイン、価格、希少性等
「中国向け」「欧米向け」より商品単位で見る

同じ国でも化粧品と工芸品では競合、規制、販売チャネルが違います。国だけではなく「国 × 商品カテゴリー」で調査します。

販売候補国を選ぶときの判断軸

市場規模ランキングだけで販売国を決めるのではなく、自社商品との相性を確認します。

判断軸 確認すること
需要 類似商品が検索・購入されているか
競争 競合商品・価格・レビュー数
粗利 国際送料・手数料を含めて利益が残るか
規制 輸入・販売可能か
物流 現実的な送料・日数で届けられるか
決済 現地顧客が購入できるか
運営 問い合わせ・返品へ対応できるか

たとえば市場規模が小さくても、競争が弱く、自社商品への明確な需要があり、十分な利益を確保できる市場なら検討価値があります。

越境ECの市場調査で確認する順序

1 販売可能な商品か確認する

対象国の輸入規制、必要な認証、表示義務などを確認します。

2 需要を確認する

検索、モール、SNS、競合商品などから購入需要を調べます。

3 競合と価格帯を確認する

商品価格だけでなく送料を含む顧客負担額も比較します。

4 物流と利益を確認する

国際送料、手数料、返品等を含めて採算を確認します。

5 販売チャネルを確認する

自社EC、現地モール、越境ECモールなど候補を比較します。

6 小規模に需要を検証する

最初から大規模な在庫や広告投資を行わず、販売可能な方法で反応を確認します。

30日・60日・90日に固定しない

越境ECの検証期間は商品、注文量、輸送日数、販売国によって異なります。一定日数が経過したら自動的に拡大するのではなく、販売可否、需要、利益、物流、返品などの基準を満たしたら次へ進みます。

市場参入後に見るKPI

市場規模の大きさではなく、自社商品の実際の反応を確認します。

KPI 確認すること
国別アクセス 対象国から商品が見られているか
商品ページ到達 どの商品に需要があるか
カート追加 商品・価格への関心があるか
購入率 購入まで進めているか
注文単価 送料を含めた採算に合うか
配送費 利益を圧迫していないか
配送日数 予定どおり届けられているか
返品・返金 商品説明や配送に問題がないか
問い合わせ 購入前情報が不足していないか
売上だけで市場適合を判断しない

売上が出ても国際送料、広告、返品、決済手数料などで利益が残らない場合があります。売上と運営コストを合わせて判断します。

越境EC市場の今後を見るときのポイント

今後も越境ECを考える際は、「どの国が伸びるか」という予測だけに依存しない方が安全です。

継続的に確認したいのは次の変化です。

  • 対象国のEC利用状況
  • 日本商品の購入動向
  • 検索・SNS等の商品発見方法
  • 主要モールの利用状況
  • 決済サービス
  • 国際物流費
  • 為替
  • 関税・税制度
  • 輸入規制
  • プラットフォーム規約

特に法律、税、輸入規制、プラットフォーム仕様は変更されるため、過去の記事だけで判断せず、販売開始時点の公式情報を確認します。

JETROでは、国別・業種別の海外ビジネス情報や越境EC支援情報も公開されています。

JETROの最新越境EC情報を確認する

市場データと成功事例を分けて考える

成功企業の事例は参考になりますが、「同じ市場へ同じ商品を出せば再現できる」という意味ではありません。

事例を見るときは、売れた国だけではなく、次の条件を確認します。

  • 商品カテゴリー
  • 価格帯
  • 対象顧客
  • 販売チャネル
  • 集客方法
  • 物流
  • 現地対応

越境EC市場調査でよくある失敗

市場規模が最大の国から始める

自社商品の需要、規制、競争、物流、利益を合わせて確認します。

日本製なら売れると考える

日本製であることだけでなく、海外顧客にとっての商品価値を確認します。

地域を大きくまとめる

「アジア」「欧米」だけではなく、国と商品カテゴリー単位で調査します。

商品価格だけを比較する

顧客が負担する送料・税等も含めて比較します。

需要を調べてから規制を確認する

商品によっては輸入・販売条件の確認を先に行う必要があります。

日本語の商品ページを翻訳するだけで販売する

対象国の顧客が必要とするサイズ、配送、返品などの情報も確認します。

売上だけで成功判断する

送料、手数料、広告、返品まで含めて利益を確認します。

越境EC市場調査チェックリスト

市場

  • 対象国の市場データを確認した
  • 自社商品カテゴリーの需要を確認した
  • 競合商品を確認した
  • 価格帯を確認した

販売条件

  • 輸入規制を確認した
  • 必要な認証・表示を確認した
  • 関税・税の扱いを確認した
  • 知的財産上の問題を確認した

購入体験

  • 現地顧客が利用できる決済がある
  • 送料を確認できる
  • 配送日数を確認できる
  • 返品条件を確認できる

採算

  • 国際送料を含めて利益を確認した
  • 販売・決済手数料を確認した
  • 広告費を想定した
  • 返品発生時の負担を確認した

検証

  • 小規模に需要を確認できる方法がある
  • 国別アクセスを確認できる
  • 購入率・返品等を確認できる
  • 継続・停止の判断基準がある

越境EC市場動向に関するFAQ

越境EC市場は拡大していますか?

経済産業省の2024年調査では、日本・米国・中国3か国間の越境EC市場はいずれも前年から増加しています。ただし、商品カテゴリーや販売国によって状況は異なります。

日本の越境EC市場は2兆6,372億円ですか?

その表現は正確ではありません。2兆6,372億円は、2024年に中国の消費者が日本事業者から越境ECで購入した金額です。

どの国から越境ECを始めるべきですか?

市場規模だけでは決められません。自社商品の需要、競争、規制、物流、決済、利益、運営体制を国ごとに比較します。

日本の商品なら海外で売れますか?

日本商品への需要がある市場はありますが、日本製というだけで購入されるとは限りません。顧客が感じる価値、競合との差、価格、送料などを確認します。

越境ECは自社ECと海外モールのどちらがよいですか?

一律の正解はありません。顧客獲得力、手数料、ブランド表現、物流、運営負担などを比較します。需要確認のためにモールを利用し、その後自社ECを強化する方法もあります。

市場調査の次に何をすればよいですか?

販売可能性を確認した後、商品規制、採算、決済、物流、返品、商品ページを整理し、小規模な販売テストへ進みます。

まとめ

越境EC市場を見るときの順序
  1. 公的な最新市場データを確認する
  2. 数字の買い手・売り手を区別する
  3. 自社商品の販売可否を確認する
  4. 国 × 商品カテゴリーで需要を調べる
  5. 競合・価格・物流を確認する
  6. 決済・税・規制を確認する
  7. 小規模な販売で需要を検証する
  8. 売上だけでなく利益・返品・運営負担で判断する

越境EC市場は拡大していますが、市場全体の成長が個別ショップの成功を保証するわけではありません。

市場規模は販売候補国を考える入口として使い、その後に自社商品の需要、規制、競争、物流、決済、利益を確認する必要があります。

特に越境EC統計では、「どの国の消費者が、どの国の事業者から購入した金額なのか」を確認してください。

販売候補が見つかったら、最初から多数の国へ展開するのではなく、条件の合う市場から検証し、実際の購入・配送・返品データを見ながら拡大します。

まず販売候補国を1つだけ調べる

市場規模だけで決めず、「自社商品の需要」「輸入・販売可否」「競合価格」「国際送料」「利益」の5点を確認してください。条件が合えば、次に小規模な販売準備へ進みます。

越境ECの具体的な始め方を確認する

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