
B2B ECとは、法人向けの受発注をオンラインで行う仕組みです。
一般消費者向けECと異なり、法人取引では、取引先ごとの価格、掛け払い、締め日、発注単位、見積、承認、請求書などの条件が関係します。
そのため、B2B EC構築では、最初にデザインや商品ページを作るのではなく、現在の取引条件と受注業務を整理することが重要です。
たとえば、同じ商品でもA社とB社で価格が違う、1個ではなく1ケース単位で注文する、別注品だけ見積が必要といったルールがあるなら、それをシステムへ反映できる状態にします。
また、注文画面だけオンライン化しても、受注後の在庫引当、出荷、納品書、請求書、入金確認が手作業のままでは効率化は限定的です。
この記事では、B2B ECの基本、必要な機能、法人受発注を整理する方法、ツール選定、電子帳簿保存法・インボイス制度の確認ポイント、導入手順、KPIを解説します。
- B2B ECは法人取引ルールをオンライン化する仕組み
- ツール選定より先に価格・ロット・支払条件を整理する
- すべての商品・顧客を最初から移行しない
- 定番受注など例外の少ない取引から始める
- 注文画面だけでなく受注後の処理まで設計する
- 電子請求書・注文書などの保存要件も確認する
- 売上だけでなく入力時間・ミス・問い合わせも測定する
- 高機能なシステムより自社の取引条件との適合を優先する
B2B ECとは
B2B ECとは、企業間で行われる商品・サービスの受発注を、Webサイトや専用システムなどを通じて電子化する仕組みです。
経済産業省によると、2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%でした。
法人取引では、取引先別価格、ロット、掛け払い、見積、承認、請求などを扱う場合があります。一般消費者向けカートと同じ構成では対応できないことがあります。
B2C ECとの違い
| 項目 | B2C EC | B2B EC |
|---|---|---|
| 価格 | 基本的に共通 | 取引先別価格の場合がある |
| 注文単位 | 1個単位が多い | 箱・ケース・ロット単位がある |
| 決済 | カード等 | 掛け払い・請求書払いを含む場合がある |
| 見積 | 少ない | 別注品などで必要になる場合がある |
| 承認 | 基本的に不要 | 社内承認が必要な場合がある |
| 再注文 | 商品を探し直す場合が多い | 同一商品を定期的に再注文することがある |
| 帳票 | 注文確認・領収書等 | 見積書・納品書・請求書等が重要 |
B2B ECを検討しやすい状態
法人受注で次のような手作業が増えている場合は、B2B EC化を検討する余地があります。
- メールやFAXで定番注文を受けている
- 受注内容を別システムへ手入力している
- 取引先ごとの価格確認が頻繁にある
- 在庫確認の問い合わせが多い
- 毎回同じ商品を同じ法人が注文する
- 注文後に数量・ロットの修正が多い
- 請求書発行に時間がかかる
- 営業担当しか取引条件を把握していない
注文数が少なくても、1件あたりの確認項目や手入力が多い場合は効率化効果が出ることがあります。現在の作業時間とミス件数も確認してください。
構築前に整理する7つの取引条件
1.取引先別価格
取引先によって価格が違う場合は、現在使っている価格ルールを一覧化します。
- 標準価格
- 卸価格
- 代理店価格
- 契約価格
- 数量別価格
- 期間限定価格
過去の見積や口頭値引きを含め、どの法人へどの価格を適用するかを明確にします。
2.最小注文数量と発注単位
- 最小注文数量
- ケース入数
- 注文単位
- 端数注文の可否
- 数量別単価
- 最大注文数量
12個入りの商品を箱単位で販売するなら、13個など不正な数量を注文できないようにします。
3.支払い条件
- 前払い
- カード払い
- 掛け払い
- 請求書払い
- 締め日
- 支払期限
- 与信限度
すべての取引先が同じ支払い条件でなければ、法人単位で管理できるか確認します。
4.見積の要否
商品を次のように分類します。
- 価格固定でそのまま注文できる商品
- 数量により見積が必要な商品
- 仕様確認が必要な別注品
- 特定取引先限定商品
別注品まで無理にカート購入へ寄せず、見積依頼フローへ分ける方法があります。
5.送料・配送条件
- 取引先別送料
- 地域別送料
- 送料無料条件
- 直送可否
- 複数配送先
- 納品希望日
6.承認フロー
顧客企業内で注文前承認が必要か確認します。
- 担当者が注文申請
- 上長が承認
- 購買担当が確認
- 承認後に正式注文
7.帳票と請求フロー
- 見積書
- 注文書・注文確認
- 納品書
- 請求書
- 領収書
- 取引明細
B2B ECで検討する主な機能
| 機能 | 必要になる条件 |
|---|---|
| 法人別価格 | 取引先ごとに価格が違う |
| 掛け払い | 後払い・締め払いがある |
| 見積依頼 | 数量・仕様で価格が変わる |
| ロット制御 | 箱・ケース単位で販売する |
| 在庫表示 | 在庫問い合わせが多い |
| 一括注文 | SKU数が多く定番発注がある |
| 再注文 | 同じ商品を定期的に購入する |
| 承認 | 顧客企業内に購入承認がある |
| 帳票出力 | 見積・納品・請求書が必要 |
| 基幹連携 | 受注後に別システムへ入力している |
自社で発生していない取引条件まで実装すると、構築費と運用負担が増えます。現在の取引に必要な機能から選びます。
受注後の業務までつなぐ
B2B ECは注文ボタンを作っただけでは完成しません。
注文後に発生する処理を一覧化します。
法人情報、価格、数量、配送先、支払い条件を確定します。
販売可能在庫を確認し、必要な数量を確保します。
倉庫や担当部署へ出荷情報を渡します。
納品書や取引明細を作成します。
取引条件に沿って請求書を発行します。
請求額と入金を照合します。
電子帳票・インボイス・保存方法を確認する
B2B ECでは、注文書、見積書、納品書、請求書などを電子的に授受する場合があります。
国税庁では、EDI、電子メール、インターネット上のサイトを通じた取引情報の授受を電子取引の例として挙げています。
請求書や領収書などを電子データで受け取った場合は、電子帳簿保存法の要件に従った保存が必要になる場合があります。
インボイス制度も確認する
適格請求書発行事業者が適格請求書を交付する場合は、必要な記載事項を満たす必要があります。
国税庁は、適格請求書に必要な事項を満たしていれば、請求書・納品書など複数の書類で要件を満たす場合や、電子データで提供する場合についても案内しています。
自社の課税区分、登録状況、記載内容、保存方法まで確認してください。税務上の扱いは取引条件によって異なるため、必要に応じて税理士等へ確認します。
B2B ECツールの選び方
ツール名から選ぶのではなく、必要機能を先に一覧化します。
比較項目
- 法人別価格
- 掛け払い・支払い条件
- 見積機能
- 最小ロット
- 一括注文
- 再注文
- 承認フロー
- 在庫連携
- 帳票発行
- 基幹システム連携
- 会計連携
- 権限管理
- ログ・監査履歴
- 保守費用
EC型
顧客が自分で商品を探し、価格を確認して注文する形に向いています。
受発注システム型
商品販売よりも、定番発注、一括注文、帳票、受注処理を重視する場合に向いています。
業務管理型
見積、承認、受注進捗など社内業務整理が中心なら、業務管理ツールを組み合わせる方法もあります。
顧客向け注文画面と、社内の在庫・請求・承認管理が同じシステムである必要はありません。既存システムとの連携も含めて設計します。
B2B ECを導入する8つの手順
電話、FAX、メール、営業経由など、注文経路と処理時間を確認します。
価格・ロット・支払い条件が安定している定番商品から候補を選びます。
価格、締め日、支払い、配送先、送料、与信を一覧化します。
オンライン注文品、見積品、別注品、限定品へ分けます。
実際の取引条件から必要機能だけを選びます。
在庫、出荷、帳票、請求、入金までつなぎます。
条件が比較的単純で協力を得やすい顧客から試します。
エラー、問い合わせ、処理時間を確認してから顧客・商品を追加します。
公開前に確認するテスト項目
価格
- 法人ごとに正しい価格が表示される
- 未ログイン時に契約価格が見えない
- 数量別価格が正しく適用される
注文
- 最小注文数量を下回れない
- 不正な端数数量を注文できない
- 在庫不足時の動作が分かる
- 再注文が正しい商品へ反映される
支払い・請求
- 顧客ごとの支払条件が正しい
- 請求先と配送先を分けられる
- 税率・税額が正しい
- 帳票内容が正しい
権限
- 他社の価格や注文履歴を閲覧できない
- 担当者ごとの操作権限が正しい
- 管理画面の不要な権限を付与していない
在庫不足、価格未設定、与信超過、不正なロット、承認未完了など、例外ケースも確認します。
B2B ECで確認するKPI
| 領域 | KPI | 確認すること |
|---|---|---|
| 移行 | オンライン受注率 | 手作業注文が減ったか |
| 効率 | 1件あたり受注処理時間 | 入力作業が減ったか |
| 品質 | 受注ミス件数 | 数量・価格ミスが減ったか |
| 顧客 | 再注文率 | 定番注文が使われているか |
| 見積 | 見積回答時間 | 対応速度が改善したか |
| 問い合わせ | 価格・在庫確認件数 | 自己解決できているか |
| 請求 | 請求書発行時間 | 経理作業が減ったか |
| 売上 | B2B EC売上・粗利益 | 取引が維持・成長しているか |
オンライン受注率=B2B EC経由の受注件数÷法人受注総件数×100
受注ミス率=訂正が必要だった受注件数÷総受注件数×100
別注品や複雑な見積など、オンライン化しない方が効率的な取引もあります。対象業務ごとに判断してください。
B2B EC構築でよくある失敗
ツールを先に契約する
現在の取引条件と必要機能を整理してから選びます。
B2Cサイトの設定をそのまま使う
法人別価格、ロット、請求、見積など自社の取引条件を確認します。
すべての商品をEC化する
定番品と別注品を分け、オンライン化に向く商品から始めます。
すべての取引先を一度に移行する
少数の協力顧客で問題を洗い出してから拡大します。
注文画面だけを作る
在庫、出荷、請求、入金まで確認します。
例外処理をテストしない
価格未設定、在庫不足、与信、ロット違反などを確認します。
電子帳票の保存を後回しにする
電子取引に該当する書類・データの保存方法を事前に確認します。
B2B EC構築チェックリスト
取引条件
- 取引先別価格を整理した
- 発注単位を整理した
- 支払い条件を整理した
- 送料条件を整理した
- 見積品を分けた
機能
- 必要な法人別価格機能を確認した
- 掛け払い・請求条件を確認した
- 一括注文・再注文の必要性を確認した
- 在庫連携を確認した
- 帳票機能を確認した
業務連携
- 受注後の在庫引当を決めた
- 出荷方法を決めた
- 請求方法を決めた
- 入金確認方法を決めた
- 基幹・会計連携を確認した
法令・帳票
- 電子取引データの保存方法を確認した
- 請求書の必要記載事項を確認した
- 税率・税額表示を確認した
テスト
- 少数顧客で試した
- 価格表示を確認した
- ロット制御を確認した
- 在庫不足をテストした
- 請求書発行を確認した
B2B EC構築に関するFAQ
B2B ECとは何ですか?
企業間の受発注をWebサイトや受発注システムを通じて電子化する仕組みです。
B2B ECと通常のECサイトは何が違いますか?
B2Bでは取引先別価格、ロット、掛け払い、見積、承認、帳票など法人取引特有の条件が必要になる場合があります。
法人別価格は必須ですか?
すべてのB2B ECで必須ではありません。取引先によって価格が異なる場合に必要性が高くなります。
すべての商品をオンライン注文にすべきですか?
必要ありません。価格や仕様が安定した定番商品から始め、別注品や複雑な商品は見積依頼として残す方法があります。
B2B ECで請求書を電子発行できますか?
可能ですが、インボイス制度の記載事項や電子帳簿保存法に関する保存要件など、自社に適用される条件を確認してください。
最初から全取引先を移行してもよいですか?
一斉移行より、条件が比較的単純で協力を得やすい少数顧客から試し、問題を確認してから拡大する方が安全です。
B2B ECの効果は何で測りますか?
オンライン受注率、受注処理時間、受注ミス、見積回答時間、問い合わせ、再注文、請求処理時間、売上・粗利益を確認します。
まとめ
- 現在の法人受注業務を棚卸しする
- 定番受注と例外取引を分ける
- 取引先別価格・支払い・ロットを整理する
- オンライン注文品と見積品を分ける
- 必要な機能だけを決める
- 在庫・出荷・請求まで設計する
- 電子帳票の保存方法を確認する
- 少数顧客でテストする
- 処理時間・ミス・問い合わせを比較して拡大する
B2B EC構築で最も重要なのは、ECサイトを作ることそのものではありません。
現在の法人取引で使っている価格、発注単位、支払い、見積、承認、請求のルールを整理し、それをシステムへ落とし込むことです。
最初からすべての顧客と商品を移行せず、例外の少ない定番受注から始めます。
注文受付だけでなく、在庫、出荷、帳票、請求、入金確認までつなげることで、手入力と確認作業を減らせます。
導入後は売上だけでなく、受注処理時間、ミス、問い合わせ、請求時間を確認してください。
自社の取引条件に合わない機能を増やすより、現場と顧客が継続して使える最小構成を作ることが重要です。